積読層の知質学的研究

歩いて、見て、知って、感じたことども。

宵山万華鏡

宵山万華鏡 森見登美彦

・京都夏の風物詩、祇園祭宵山を舞台にした6つの短編。宵山を統べる異形・宵山様を軸に物語は展開する。

宵山姉妹」

好奇心旺盛な姉と泣き虫だがしっかり者の妹。その妹が宵山で経験した不思議な話。

→例のごとく、その後の物語への伏線満杯でございました。

 

宵山金魚」「宵山劇場」

不思議な男・乙川によって仕組まれた、藤田氏を騙す「偽宵山」の企画。『祇園祭司令部』として奮闘する学生たちの活躍?を描く。

→ここは『新釈走れメロス』のような笑いと甘酸っぱさと青春の煌めき溢れるパート。『夜は短し歩けよ乙女』のゲリラ演劇「偏屈王」の美術さんが再登場!彼女の妄想のもと作り上げられる「意味のない」偽宵山であるが、じつは物語の核心にリンクしているという驚きの展開。

 

宵山回廊」「宵山迷宮」「宵山万華鏡」

15年前、宵山の夜に消えた従姉。水晶玉を探す男・乙川。画廊先代の謎の死。繰り返される宵山。赤い浴衣の少女たち。そして万華鏡・・・。

→ここから一転してダークファンタジー。まるで実相寺昭雄監督の怪奇大作戦のようなストーリーが続く。6話すべてが絶妙に絡み合い、美しくも恐ろしい、不思議な世界を紡ぎだす。僕はこういった世界観が大好きなので、本作気に入りました。『四畳半神話大系』に次ぐ傑作!

 

宵山に大切な人といったとき、もしあなたが宵山初心者であるのなら、絶対にその人の手を離さないことです・・・。

 

読了:2013年7月23日